なかなか取りかかれないのは「うまくいく」方法を探しているから

最後に賢者がミーナに向かって驚くことを言った。

「商人を目指す者よ。今日から商売を始めるように」
「今日からですか? でも私は商売のことなど何も知りません」
「昨日も教えてやったではないか。詳しいことは知らなくてよい。まずは誰かの真似をして始めてみなさい」

(中略)

「他のことはあとから学べばよい。知るために商売をしなさい。成功しない商人は成功するために商売をしようとするのじゃ」

ミーナは混乱した。

「成功するために商売をして、なぜ成功しないのでしょうか」

『月の商人』より

この短い問答は、商人になるためのヒントであると同時に、なかなか取りかかれない仕事に取りかかるためのヒントでもあります。

とにかくまずは着手せよ、ということです。

実に簡単そうに思えます。

「賢者」の言葉に触れるまでもなく、「サッサと着手すればいいのだ」と頭では分かっている人は少なくないでしょう。

でも、いざ着手しようとすると、手が止まる。

その理由は無意識のうちに「うまくやろう」と考えてしまうからでしょう。

  • なかなか取りかかれないことに取りかかる
  • しかもそれを「うまくやる」

という2つを同時に実行することになり、自らハードルを上げてしまっているわけです。

それゆえ「賢者」は「詳しいことは知らなくてよい」と諭します。

このアドバイスを、なかなか取りかかれない仕事を抱えている人向けに言い換えるなら、

  • 「こうすればうまくいきそう」という手筋は知らなくてよい、探そうとしなくてよい

ということになるでしょう。

代わりに着手せよ、というわけです。

振り出しに戻ってきてしまいました。

もう少し考えてみます。

「とにかくまずは着手せよ」と言われて「ハイそうですね」とすぐに動き出せないのはなぜなのか?

それは、わけもわからず動き出して時間と手間を無駄にしたくないから、ではないでしょうか。

登山中に遭難したとき、闇雲に歩き回れば無駄に体力を消耗してしまい危険です。

貴重な水や食料を消費してしまうことにもなるでしょう。

人は本能的に無駄なことはしたくないわけです。

ではどうすればいいか?

指針は次の2つです。

  • 待つ
  • 声を上げる

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