使った時間の記録を続けていると、複数の自分による分業化が進む

前回に引き続き、Tさんのインタビューをお届けします。

記録から得られるリターンをさらに積み増すために

大橋(以下、O):前回、すぐに役に立つ記録の事例として「持ち物リスト」を取り上げていただきました。

記録をもとに持ち物リストを作り、これを使うことで「役に立つ」というリターンを得ると同時に最新の現状に合わせてリストを調整することで、リターンをさらに積み増すことができる、というお話でした。

今回は、そこから次のステップに進みたいのですが、TさんがTaskChute2を続けることで得られているリターンはほかに何かありますか?

Tさん(以下、T):しばらく記録を続けていて気づいたことが2つあります。

1つめは「毎日やっているのだからかかる時間なんてわかっている」と思っていた、習慣にかかる時間が現実と想像でずれがあったことです。

所要時間は、実際にかかる時間よりも短めに考えがちです。

私の場合、髪の毛をドライヤーで乾かす時間がそうでした。

時間を記録する前は、そもそも髪を乾かすのにどれくらい時間がかかるかなんて気にしたことがありませんでした。

「だいたい5分くらいだろう」と思っていたのですが、TaskChuteで記録してみたところ、平均はなんと10分。

5分で済んだことは1度もありませんでした。

O:人の時間感覚はだいたい間違っていますよね。しかも、悪い方向に。

T:2つめの気づきは、自由時間、つまり何に使うかまだ決めていない空き時間の意外な少なさです。

仕事がある日と休日とで、それぞれ以下のように考えていました。

  • 仕事の場合、昼休みの時間を除いた7.5時間
  • 休日の場合、24時間から睡眠時間を引いた残り時間

当然ですが、仕事中でも家での生活でも削れない時間が存在します。

仕事の場合は、メール対応や会議の時間。

家では、朝の身じたく、食事、入浴の時間などです。

その他、部下との打ち合わせや習い事など決まった時間に必ずやると決めていることがあれば、さらに空き時間は減っていきます。

O:お金でいうと固定費ですね。天引きされていく、という。

T:はい、そういう固定費的な時間が見えるようになったことで、現実の空き時間が把握できるようになりました。

さらに、空き時間が得られても、そのときの自分が必ずしもやる気に満ちているとは限りません。

空き時間にも種類があったわけです。

O:同じ時間でも、用途が限られてしまう場合がある、ということですね。

朝の1時間と夕方の1時間は、同じ1時間でもその使いみちは変わるでしょうし、変えたいでしょうから。

T:確かにそうですね。

私の場合は、会議前後の空き時間は集中力が必要な仕事をこなそうとしても進まないことがわかりました。

O:空き時間は、時間としての長さだけでなく、その性質も含めてとらえておく必要があるわけですね。

その時間の自分の得意・不得意を把握しておく、というか。

複数の自分による分業化が進む

関連記事