マルチタスクが役に立つケース

マルチタスクは避けたほうが良い、とよく言われます。

確かに複数のタスクを同時並行して進めることで、タスクの「待ち時間」が減ります。

タスクの「待ち時間」とは、手を着けずにやむを得ず放置している時間のことです。

AとBとCの3つのタスクを抱えているとき、一つずつ順番に取りかかり、終わらせていくとしたら(=シングルタスク)、AとBが終わるまでCは「待たされる」ことになります。

AとBを終えて、ようやくCに取りかかろうとしたら時間切れ、となることもあるでしょう。

このような事態を防ぎたいために、人は複数のタスクを同時並行して進めたいと考えるのかもしれません。

とはいえ、厳密には「同時」には進めることはできず、その実態は小刻みにタスクを切り替えながら少しずつ進めることになります。

頻繁にタスクを切り替えるために、その都度わずかな時間ではありますがアイドルタイムが発生します。

さらに、タスクの切り替えに合わせて、頭の切り替えも必要になります。

同時並行して進めるタスクの数が増えるほどに時間も負担も増すことになるわけです。

それでも、このように同時並行して進める方が望ましいケースもあります。

それは料理をつくるとき。

複数の料理を同時並行して調理することで、料理の「待ち時間」が減ります。

もし、1品ずつ順番に調理を進めていくとしたら(=シングルタスク)、すべての料理が完成する頃には最初に完成させた料理は冷めてしまうでしょう。

料理の場合、複数の料理を同じタイミングで完成させることが望ましい。

そうなると、切り替えの時間や負担が増えたとしてもマルチタスクで進めることが最善となります。

では、仕事の場合はどうか。

必ずしも、複数のタスクを同じタイミングで完了させる必要がないことの方が多いのではないでしょうか。

そうであれば、その日のうちに完了させる必要があるタスクから順番にシングルタスクで片づけていくのが安全かつ安心でしょう。

それでもなおマルチタスクで進めたいと望むとしたら、そこには別の問題がありそうです。

例えば、

  • 抱えているどのタスクもその日のうちに完了させる必要がある
  • 時間の経過とともにタスクの優先順位が変化する

といった状況に置かれているときです。

このような状況では、最初に決めた順番通りにシングルタスクで進めるのではなく、途中で順番を入れ替えながら可能な限り長い「距離」を確保しつつシングルタスクで進めることが最善となります。

そして、このような仕事の進め方こそが理想的だと僕は考えています。

マルチタスクの圧に抗いながらシングルタスクで押していくという負荷がかかりますが、この負荷に対する十分な見返りが得られるからです。

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